5年目のご挨拶
紀尾井町に脳神経外科内科クリニックをオープンして5年、同時に鎌ケ谷総合病院で脳神経外科部長を兼任して5年たちました。クリニックでは脳神経外科だけでなく内科を含めて診療に当たり、鎌ケ谷総合病院では血管内外科の兵頭明夫先生と毎週水曜日に脳神経外科の手術を続けてきました。
実にこの5年間の間に、脳神経外科の治療が大きく進歩するのを実感しました。その原動力は脳血管内外科の進歩です。現在ではクモ膜下出血のほとんどは開頭術をすることなく、脳動脈瘤のコイリングとステント留置で治療することが出来ます。ここで特記すべきことは、開頭術に比較してその治療成績が非常に良いことです。どれほど開頭術をうまく行ったとしても、頭蓋骨を開けて脳を露出して治療する従来の脳外科手術は血管内外科よりも侵襲的だと言うことです。
そのため、鎌ケ谷総合病院、脳神経外科では、脳動脈瘤は脳血管内外科ファーストを治療方針としました。困難な脳動脈瘤の治療も上手くいくのは、兵頭明夫先生の類い希な技術と経験数の多さのおかげです。
脳腫瘍においても、血管内外科で脳腫瘍を栄養する動脈を塞栓術で閉塞してから開頭摘出術を行っています。栄養の行かなくなった脳腫瘍は死んでしまうために柔らかくなり、そして摘出時には血管が閉塞されているために出血することはなくなり、安全に摘出が可能となります。また摘出時に術中ナビゲーション、術中神経モニタリングを併用することによって、手術操作による麻痺や失語症などを回避しています。
転移性脳腫瘍、脳深部や脳への癒着が強い腫瘍に対しては、無理な摘出手術は行わずに残った腫瘍にガンマナイフという戦略で治療しています。
血管内外科、ガンマナイフなどの最新の治療を導入することによって、脳外科の手術は安全になるばかりでなく、手術時間は短くなり、開頭の範囲も極めて小さくなりました。その結果、侵襲を極力抑えた脳神経外科手術を提供できるようになりました。
今後当院は、今まで以上に都内の皆様を鎌ケ谷総合病院、脳神経外科へ案内するゲートの役割を果たします。
東京都内の方、そして都内以外の方でも、貴方がまたは貴方の家族が、この動脈瘤の治療は難しいと言われたとき、合併症が起きるかも知れないと言われたとき、この脳腫瘍の手術は難しいと言われたとき、氏家脳神経外科内科クリニックのセカンドオピニオンまたは診察があなたをサポートします。
クリニックの通常の診察では、脳卒中・認知症の予防に力を入れています。一度壊れた神経組織をもとの状態に戻すことはできないため、脳の疾患は予防が大切になります。健康が人生のすべての基礎にあります。そうです、元気があれば、何でもできる!
当院では、脳卒中のリスクファクターを詳しく調べます。特に脳のMRI/Aを行うことによって、脳出血、くも膜下出血の危険性を調べるだけでなく、脳梗塞の原因となる脳動脈の狭窄、認知症を引き起こす海馬の萎縮なども正確に調べます。また、頸動脈の動脈硬化、変形性頚椎症についても、同時にMRIで調べ、頭痛、身体のしびれ、めまいなどが起きる原因を徹底的に調べます。
脳卒中の原因となる生活習慣病である高血圧症、糖尿病または食後高血糖の方、高脂血症の方、ぜひ当院で血液検査を受けてください。現在の生活に合った食事療法、運動療法、薬による治療についてご説明します。
最近の血管内外科手術を紹介致します。
兵頭明夫先生(獨協医科大学埼玉医療センター前病院長、前脳神経外科教授)が、鎌ケ谷総合病院に脳血管内外科部長として勤務したのと同時にシーメンス社のARTIS icono D-Spinという革新的な脳血管内外科手術用のマシーンが当院に設置されました。
当院での血管内外科手術の治療風景
殆んどすべての脳動脈瘤、脳動静脈奇形、硬膜動静脈漏、頚部内頚動脈狭窄、脳腫瘍術前塞栓術など、開頭術では困難と思われる症例でも、最高級マシーンと兵頭先生の持つ技術力、経験力が組み合わさることによって、鮮やかに治療されていきます。
私は今まで開頭術一辺倒で生きてきた脳神経外科医ですが、最高級マシーンiconoの画像解像度の高さ、操作性の柔軟性、そして毎年のごとく研究開発される新しいカテーテルやフローダイバーター(flow diverter: 巨大脳動脈瘤を治療するステント)などの新しい治療機器、兵頭先生のカテーテルの先端を自在に操る技術力を目の当たりに見て、「脳動脈瘤の開頭術の時代は終わった」と思いました。
治療機器の進歩によって困難な手術が容易かつ安全になるのは、患者さんに取って朗報です。
症例をいくつか提示します。
左図では脳血管が見やすく3次元画像で表示されていて、内頚動脈の頭蓋内移行部に脳動脈瘤が見えます。右図では動脈瘤の中にプラチナコイルが入っているのが分かります。プラチナコイルのタングル(ぐるぐる巻き)が動脈瘤の中の容積の40%近くになると動脈瘤内の血液は流れることは出来ず血栓化して、動脈瘤を塞いでしまうことになります。脳動脈瘤の中に血液が流れなくなれば、完治は間近です。
左図に大きな内頚動脈瘤があるが、この動脈瘤は海綿静脈洞内に存在し、開頭術で治療するのは極めて難しい。しかし、血管内外科ではフローダイバーターという治療法があります。網目の細かいステントを脳血管内に留置することによって、動脈瘤内への血流を低下させ、時間をかけて動脈瘤内の血栓化を促す治療法です。極めてエレガントな手術方法です。
この図は内頚動脈の断面図です。動脈の内側にステントが見えます。iconoではこのように脳血管撮影だけでなくCT scanの撮影も可能です。この図で見るように動脈の内腔と動脈瘤のあいだには金属の隔壁が出来ています。この金属の壁に血管内皮細胞が生えれば、脳動脈瘤の治癒になります。
左図は頚部内頚動脈狭窄(血液が流れている部分が糸のように細くなっているのがわかる)、この狭窄部位にステントを入れて広げたのが右図です。糸のような血管が広がっているのが一目瞭然です。
これらの手術はほんの一例ですが、一般に血管内外科治療は身体にメスを入れるわけではないので、開頭術に比較すると問題にならないくらい非侵襲的でかつ入院日数も数日ですみます。
しかし、術前からの抗血小板療法、抗血小板が効いているかどうかの確認、どのようなカテーテルで攻略するか、合併症を防ぐために必要なバルーンカテーテル、など細かい技術的な側面が伴わなければ、やはり血管内外科治療でも致命的な合併症が起きます。この合併症を出来る限り防ぐために、当院では兵頭先生を筆頭に毎朝の回診、週1回の全体カンファレンス、週3度以上の個別カンファレンスを行っています。
鎌ケ谷総合病院は、都内から電車でわずか1時間程度の道のりです。
東京都内の方、そして都内以外の方でも、貴方がまたは貴方の家族が、この動脈瘤の治療は難しいと言われたとき、これは合併症が起きるかも知れないと言われたとき、この脳腫瘍の手術は難しいと言われたとき、是非氏家脳神経外科内科クリニックのセカンドオピニオンまたは診察を受けて下さい。
脳には、心が、そのヒトの人生の歴史すべてが宿っています。脳神経外科は個人の技術だけでなく、病院全体のチームワークがあって初めて良い結果を出すことが出来ます。現在の鎌ケ谷総合病院の脳神経外科、麻酔科、手術室、術後の管理をするICUは個々人の能力が高いだけでなく、チームワークが取れていることが誇りです。
医者を選ぶのは間違いなく、寿命の選択になります。
脳神経外科の治療方針で迷ったり、悩んだときには鎌ケ谷総合病院の入り口である氏家脳神経外科内科クリニックを受診してください。
氏家脳神経外科内科クリニック院長
兼 鎌ケ谷総合病院脳神経外科部長 氏家 弘
略歴
1978年4月 | 東京女子医科大学 脳神経センタ- 脳神経外科 研修医 |
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1980年4月 | 東京女子医科大学 脳神経センタ- 脳神経外科 助手 |
1980年7月 | 都立豊島病院 脳神経外科 研修医 |
1981年8月 | 東京女子医科大学 脳神経センタ- 脳神経外科 助手 |
1986年4月 | 飯山赤十字病院 脳神経外科 部長 |
1988年2月 | 所記念病院 脳神経外科 部長 |
1989年12月 | ミュンヘン工科大学 留学 |
1991年8月 | 山梨厚生病院 脳神経外科 部長 |
1993年5月 | ウエルーズ大学基礎循環器留学 |
2000年1月 | ウエルーズ大学基礎循環器留学 |
2000年10月 | 東京女子医科大学 脳神経センタ- 脳神経外科 講師 |
2004年11月 | 東京女子医科大学 脳神経センタ- 脳神経外科 助教授 |
2004年11月 | 理研ベンチャーメディカルイオンテクノロジー代表取締役社長就任 |
2005年4月 | 東京女子医科大学 看護大学院講師 |
2007年4月 | 東京女子医科大学 脳神経外科 准教授 |
2009年5月 | 東京労災病院 脳神経外科部長 |
2012年4月 | 医工連携室長 先端医療工学科部長 |
2015年4月 | 東京労災病院 副院長 |
2016年7月 | 大田 医工連携アドバイザー |
2017年4月 | 東京労災病院 脳神経外科顧問 ブルースカイ松井病院 脳神経外科部長 |
2019年4月 | 氏家脳神経外科内科クリニック院長 |
2019年4月 | 東京都市大学 工学部客員教授 |
2019年6月 | 鎌ケ谷総合病院 脳神経外科部長 |
専門医資格
- 脳神経外科専門医
- 脳卒中専門医