セカンドピニオン外来
この外来は、突然、脳動脈瘤を指摘されどうすれば良いか困っている方、脳腫瘍があると言われ手術が必要といわれたが本当だろうかと悩んでいる方、の相談を受ける外来です。
外科手術の基本は、“けが”なので、私が手術を受ける立場に立てば、手術による合併症が心配になるのは簡単に想像がつきます。特に脳神経外科の手術は、全身麻酔も必要であり、開頭という手技によって脳を露出するところから始まるので、怪我は怪我でも大けがの部類に入ります。大けがをしてもヒトの命を脅かす脳動脈瘤や脳腫瘍を治癒させるために、手術を行うわけですが、このけがをできるだけ最小限に抑えて、手術によって得る効果を最大にすることが外科治療の最大の目標です。
しかし、皆さん、この10年の間に脳神経外科の治療は、驚くほど進歩しました。脳神経外科の手術のメインに血管内外科が躍り出たのです。血管内外科でクモ膜下出血の原因となる脳動脈瘤のほとんどは治療できますし、脳腫瘍の術前塞栓術を行うと脳腫瘍は摘出時に血は出なくなり、そして柔らかくなるので、その摘出は容易になります。また運動野や言語野に近接した部位では腫瘍を残してガンマナイフという治療も可能となったのです。無理をして全摘出術をする必要はなくなり、術後の片マヒや失語症も避けることが出来るようになったのです。勿論小さな脳腫瘍や脳動静脈奇形では最初からガンマナイフでの治療で完治できます。
脳神経外科の開頭手術が今後減っていくことは予想され、すでにその減少が欧米では起きています。
不必要な開頭術を避けるだけでなく、安全な開頭術を受けるためにも当院で利用してください。受診時には、もし可能であれば、前医で撮った画像を持参する事を進めます。
よくある相談1:脳動脈瘤
偶然に検査したMRI/Aで脳動脈瘤が発見され、手術すべきかどうか困っていませんか。
未破裂動脈瘤は破裂すると死亡率は50%近いのですが、未破裂脳動脈瘤の年間破裂率はせいぜい1%です。予防的な手術でも合併症の起きる確率は2-3%です。しかし、多くの未破裂脳動脈瘤は生涯にわたって破裂しません。とすると、将来破裂しない動脈瘤を手術する必要はありません。貴方が、手術を受けるという決断をする前に、貴方の未破裂動脈瘤が近い将来本当に破裂するのかどうか知る必要があります。当院、脳神経外科は、この重大な質問『手術すべきか、否か』に答えます。
脳動脈瘤は生まれた時からあるものではありません。脳動脈瘤の出来やすい脳血管の構築を持っているヒトに喫煙等のストレスが加わった時に、出来ます。
3枚の絵は、出来かけた動脈瘤、少し成長した動脈瘤、破れる直前の動脈瘤を模式化したものです。左の絵では動脈瘤の中に血液が勢いよく入り、動脈瘤の壁に沿ってスムースに流れているのがわかります。しかし真ん中になると動脈瘤の中に入った流れは、動脈瘤の奥まで行かずに奥には二次渦流れが出来ています。
そして右の動脈瘤になると二次渦流れの壁のところが少し膨らんで、娘動脈瘤が出来ています。この娘動脈瘤の中の流れはほとんど停滞しています。このように娘動脈瘤が生じて流れが停滞すると、動脈瘤はじきに破裂します。
簡単に言うと、動脈瘤の中の流れがスムースでなくなると、破裂しやすくなるのです。
当院では、MRI/Aの精密画像を撮影し、この破れやすい形態を診断します。
よくある相談2:脳腫瘍
『MRIを撮った後の説明で脳のこの部位に影があり、脳腫瘍が疑われます。脳神経外科にかかってください。』と言われてびっくりしていませんか。脳腫瘍は、大きく分けると良性と悪性があります。良性腫瘍は全摘出すれば完治しますが、悪性腫瘍は脳組織にしみ込むように浸潤していくので、全摘出すると一緒に正常な脳の一部も取れてしまい、術後に手が動かなくなったり、話が出来なくなります。また良性といわれても脳腫瘍が脳の深いところにあると、手術が非常に難しくなります。
脳腫瘍は、脳組織から発生した原発脳腫瘍と肺などから脳へ転移した転移性脳腫瘍に大きく2分されます。原発性脳腫瘍の場合は、髄膜腫25%、神経膠腫(グリオーマ)25%、下垂体腫瘍20%、聴神経腫瘍10%この4つの腫瘍で原発性脳腫瘍の80%を占めます。
脳腫瘍の手術は、術前の塞栓術+摘出術、部分摘出術+ガンマナイフで、非常に安全に出来るようになります。開頭手術が従来からある歩兵戦術であれば、血管内外科やガンマナイフは空軍による爆撃です。空軍による爆撃によって、脳腫瘍をたたいた後に歩兵部隊の登場というのが私の進める脳腫瘍の治療戦略です。そのような治療戦略が可能かどうか、相談に乗ります。